職域を広げた特例子会社
「障害者雇用促進法」について
障害者求人を考える際に、まず理解しておきたいのが、厚生労働省が定める「障害者の雇用の促進等に関する法律」(略称:障害者雇用促進法)です。
この法によって、企業は常用労働者における一定割合以上の障害者を雇用することが義務づけられています。
また、障害者雇用促進法によって定められた障害者雇用率を「法定雇用率」と呼び、「障害者雇用率制度」によって事業主は法定雇用率以上の割合で障害者を雇用することが義務づけられています。
民間企業では常用労働者数(全従業員数から除外率相当の労働者数を除いた数)が43.5人以上の一般企業の法定雇用率が2.3%(2021年3月1日に2.2%から引き上げ)、国・地方公共団体が 2.6%(2021年3月1日に2.5%から引き上げ)、都道府県等の教育委員会が2.5%(2021年3月1日に2.4%から引き上げ)と定められています。この考え方は、「意欲・能力に応じた障害者の雇用機会の拡大」をめざしたもので、障害のある労働者全般を対象とする制度です。
障害者求人を考える上で、まずは、このような社会のしくみを理解しましょう。
特例子会社制度
事業主が障害者の雇用に対して特別に配慮した子会社を設立し、一定の要件を満たす場合には、特例子会社として、そこで雇用される障害者を親会社の実雇用率に算定できます。特例子会社と認定されるには、親会社が当該子会社の意思決定機関を支配し、役員派遣を行うことなどが要件になります。
では、具体的に特例子会社にはどんな利点があるでしょうか。
まず、親会社よりも規模が小さい分、働く環境の整備がしやすくなります。
例えば、親会社ではコスト的にすべての設備をバリアフリー化することが困難だったとしても、比較的小さな特例子会社のハード面すべてをバリアフリー化するのはそう難しくはありません。
次に、職域を広げることで、働く可能性が高まります。
特例子会社は別会社であるため、親会社やグループ会社と同じ事業をする必要はありません。そのため特例子会社ならではの事業を行い、職域を広げることで、さまざまな職種が用意できます。例えば、メール便業務や社内印刷物の作成、総務や経理を始めとする事務関連職、専門的な技術を要するエンジニアなど、その職種は多岐にわたります。
障害者雇用促進法による特例子会社の誕生によって、障害者の働き方は大きく変化しています。企業によっては、一般的な採用とは別に特例子会社を設立する企業も増え、雇用の機会は増加傾向にあります。
厚生労働省職業安定局障害者雇用対策課の「令和2年障害者雇用状況の集計結果」(2021年1月)をみると、特例子会社の総数は542社(2020年6月1日時点)に上り、前年よりも25社増加しています。この数字をみるだけでも、特例子会社の存在が年々大きくなっていることがわかります。
今後も業種や企業規模にかかわらず、積極的に採用に取り組む企業が増え、雇用率向上につながることが予想されます。
グループ適用
特例子会社を持つ親会社では「グループ適用」が認められています。これは、企業グループの中に特例子会社をつくり、他の関係会社を含むグループ全体を親会社に合算して実雇用率を算定できる仕組みです。
さらにこうしたグループ適用に加えて「事業協同組合等算定特例(特定事業主特例)」とともに、「企業グループ算定特例(関係子会社特例)」が創設されました。
この企業グループ算定特例は、一定の要件を満たす企業グループとして厚生労働大臣の認定を受けたものについては、特例子会社がない場合であっても、企業グループ全体で実雇用率の通算が可能となるものです。これによって、グループ内の関係子会社全体を合算して実雇用率を算定できるようになりました。グループ内に障害者が就労しやすい業務を行う子会社がある場合、親会社の責任の下で雇用が進められるため、グループ全体での業務効率と雇用の促進が両立できるようになりました。
障害者求人と障害者雇用の現状
厚生労働省が発表した障害者雇用状況の集計結果によると、2020年6月時点の雇用率は2.15%で、前年の2.11%から0.04ポイント上昇しています。また、雇用障害者数においても57万8,292.0人と前年より1万7,683.5人増加し、17年間連続で過去最高を更新しました。
しかし、障害者が仕事をするための環境は十分ではありません。
特例子会社制度やグループ適用に続き、働く環境を考慮したビジネスモデルの創出やワークシェアリング等就業体制に対する創意工夫など、今後も働く環境の整備が重要といえるでしょう。