障害者採用のベストマッチを実現するための職場環境・設備
相互理解の重要性
障害者求人と一般求人の採用・選考過程における最大の違いは、「障害内容」に対する企業と求職者への伝達や確認です。
株式会社サーナワークス研究所が毎年発行している「障がい学生の就職活動白書2013年卒版」によると、選考過程で企業が配慮や工夫をした内容として「会場の設定」「駐車場の確保」「ノートテイカーの同席」「点字資料の準備」「手話通訳者の同席」などが挙げられています。これらの内容は、障害のある学生が企業に希望する配慮の内容とほぼ一致しています。
障害者求人においては、「障害内容」について求人企業と求職者との間で「できること」「できないこと」を伝達し、確認しあうことが何よりも重要なポイントです。
職場環境への求職者と企業の認識
障害者を受け入れるために企業でも働きやすいように職場環境の整備と施設・設備の充実を図っています。その各企業の努力は、「障がい学生のための就職活動白書 2013年度版」にも数字として表れています。
実際に勤務する上で求職者が企業に求める配慮・工夫については、「勤務地の配慮」「通院への配慮」「健康管理室等の設置」「車いす用トイレの設置」「階段・廊下の手すりの設置」「段差の解消」「自動車通勤可」などが挙げられています。
一方、企業が勤務上で実際に行う配慮・工夫は「勤務地の配慮」「仕事内容の配慮」「健康管理室等の設置」「車いす用トイレの設置」「階段・廊下の手すりの設置」「自動車通勤可」などが挙げられます。
こちらも似たような項目が上位を占めており、学生の希望と企業が実践する配慮はほぼ一致していることがわかります。
同書でアンケートを受けた企業の大半が障害者を雇用する際に勤務上の配慮を行っており、労働者としての受け入れ態勢が着々と整備されていることがわかります。
障害者の採用・就職に向けて、仕事環境と職場環境への課題
採用・選考過程で行う配慮・工夫とともに、勤務上で行う配慮・工夫に対する相互理解が入社後のミスマッチを防ぐ重要なポイントといえるでしょう。
実際、企業の多くが雇用上で何かしらの問題点があると回答しており、その内容は「障害に適した仕事の確保」「受け入れ部署の理解」「周囲とのコミュニケーション」となっています。
障害者求人に積極的な企業でも、仕事環境や職場環境に対して取り組むべき課題や問題点を抱えている現状が読み取れます。そこで現在、障害者雇用の環境に変化を与えているのがInformation Technology(IT)となります。
障害者の求人環境に大きな変化をもたらしたIT
スマートフォンや端末型タブレットなど、ITの進化は我々の生活環境を大きく変えています。古くは1970年代に登場した銀行のATM、1990年代のパソコンとインターネットの普及、また、最近はパスモやスイカなどのICカードなど、生活の至るところでITは活用され、利便性は毎年のように向上しています。
障害者求人でもITの貢献は大きく、まず第一に働く環境の整備が挙げられます。メールは聴覚障害者にとってコミュニケーションの幅を広げ、働く際の意思疎通をスムーズにしました。また、利用頻度はまだ少ないようですが、パソコンの音声入力は視覚障害者にとって心強いサポートになるはずです。
同様にユニバーサルデザインの普及によって、視認性の高いWebサイトも増加。このようにITの進化はバリアフリーや設備の充実を促進し、求人活動に大きな恩恵を与えました。以前は優れた能力やスキルを自らの障害によって活かせなかった方もいましたが、ITの普及によって就労の機会や活躍できる場が増えたことは喜ばしいことです。
様々なことに貢献するIT
さらにITは在宅勤務という雇用形態の浸透にも一役買っています。通勤が困難な方を雇用する可能性を広げる在宅勤務ですが、これまではいくつもの弊害がありました。例えば、本社オフィスとコミュニケーションが取りづらい、仕事の進捗管理などが難しいといったマイナス面です。
しかし現在は、メールをはじめ、社内イントラネットによるスケジュール管理、テレビ会議システムなどを利用して弊害をクリアし、在宅勤務制度を行う企業もあります。
また、ITスキルを向上させることで就労のチャンスはさらに拡大します。IT関連の仕事の中には身体的に負担の少ないデスクワークも多いため、比較的、障害に左右されない分野といえるでしょう。そのため、例えば、ホームページ制作に必要なウェブアクセシビリティ、プログラミング、画像処理などの知識・技術の習得は、職域を広げることにつながります。
就労機会の拡大など、ITの進化は少なからず雇用環境に影響を与えています。